誰もいない湖底で、石が動いた。デスバレーに残る長い足跡

デスバレーの乾いた湖底に長い軌跡を残す石を描いた情景 世界の不思議
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人のいない乾いた湖底に、石が一本の線を引いている。米国デスバレー国立公園の「レーストラック・プラヤ」で見られる景色です。石の後ろには、確かに動いた跡がある。それなのに、動く瞬間を目にする人は長くいませんでした。

石が歩くのか、強い風が押すのか。説明はいくつもありました。風景だけを見ると、固い石が乾いた地面を滑るとは思えません。秘密は、めったにそろわない冬の条件にありました。

石を押したのは、薄い氷

国立公園局が紹介する観測では、まず浅い水が湖底にたまり、夜の寒さで水面に薄い氷が張ります。日が出ると氷が割れ、風で動いた氷の板が石を押す。下の泥はまだ柔らかく、石の移動が長い線として残りました。研究者たちは実際にその場で石の動きを観測しています。

それを確かめるまでには、気の長い待ち時間がありました。研究者たちは気象観測装置を置き、持ち込んだ石に動きを記録する機器を取り付けて冬を待ちます。実験を始めて約二年後、浅い水が張った湖底で、氷が割れ、石が動く場面に出会いました。長く誰も見られなかったのは、石の動きが遅く、しかも条件がそろう日がまれだからです。

米国デスバレーのレーストラック・プラヤに残った石の移動跡
レーストラック・プラヤに残る、石が動いた実際の跡。 写真:Daniel Mayer (mav) / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0。表示用に縮小)

写真に写るのは、石とその後ろに続く実際の跡です。写っていない氷のほうが、この景色を作る鍵だったのです。ただし、すべての石の動きが同じように起きると断定できるわけではありません。巨大な石の動きなど、なお調べる余地も残されています。

謎が解けても、景色は消えない

いつも動いているわけではなく、何年も止まったままの石もある。雨、寒さ、日差し、風がたまたま重なった日にだけ、地面へ線が書かれる。理由を知ってから見る写真は、むしろ少し不思議になります。誰もいない間に、氷と石がゆっくり動いていたのです。

この話の参考資料

冒頭画像は題材から着想したイメージです。本文の実物写真の出典は画像の下に記しました。