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オレンジ色の花とろうそくを並べた祭壇で、細い煙が立ちのぼる。メキシコの「死者の日」に焚かれるコパルです。コパルは木の樹脂からつくる香。亡くなった家族を迎える祭壇には、食べ物や写真とともに、この香りが置かれます。
死者の日という名は少し怖く聞こえるかもしれません。けれど、祭壇を整える人たちにとって、その日は大切な人を思い出し、迎える時です。そこで煙は何をするのでしょう。
帰ってくる人のために、場を清める
メキシコ国立先住民族研究所の説明では、コパルの香りには場所を清め、魂が危険なく家に入れるようにする意味があるとされます。コパルは、スペイン人が別の香を持ち込む以前から、土地の人々が神々へ捧げてきた樹脂の香でした。
木からにじみ出た樹脂を焚くと、独特の香りを含む煙が生まれます。花や食べ物が並ぶ祭壇から、煙と香りが部屋へ広がっていきます。

写真では、香炉を手に持った人が、立ちのぼる煙を広げています。祭壇の飾りだけを写した写真では見えにくい、香を焚く人の手つきまで伝わってきます。
花、灯、煙。それぞれに役割がある
鮮やかなマリーゴールドの花と、揺れるろうそく。祭壇の写真では、どうしてもそちらへ目が向きます。メキシコの公的な紹介では、ろうそくの光は魂の帰り道を照らし、コパルは場を清めるものと説明されています。すべてを「死者を呼ぶ道具」と一括りにすると、この違いが見えなくなります。
メキシコの生物多様性を扱う公的機関も、コパルの樹脂を煙にして使う習わしが、現在の家庭の祭壇や祈りに残っていると記しています。種をまく時や雨を願う時にも煙を用いる地域があるそうです。死者の日だけの演出ではなく、暮らしの祈りに根を張った香りなのです。
迎える前に、場所を整える
コパルの煙は、帰ってくる魂に向けられたものです。同時に、生きている人が「ここで待っている」と表すしるしにも見えます。花を飾り、灯をともす。そこに漂う香りが、再会の場をそっと満たします。
この話の参考資料
冒頭の画像は、花と灯りを飾った祭壇でコパルを焚く情景です。本文には、実際に香炉を持つ人の写真を掲載しています。


