円を重ねると、花が現れる。「神聖幾何学」の入口

濃紺の紙にコンパスで金色の円を重ねる手を描いた情景 神秘のしるし
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コンパスの開きを変えずに円を描き、針を円周へ移して、同じ大きさの円を重ねる。数を増やしていくと、交わる線の間に花びらのような形が現れます。「フラワー・オブ・ライフ」と呼ばれる図形にもつながる、円の重なりです。神聖幾何学にひかれた人が、最初に出会う形かもしれません。

難しい計算は要りません。線を一本足すたびに、見えていなかった六角形や小さな花が浮かび上がる。眺めていると、どこまでも広げられそうに感じます。その規則正しさと、次の形が現れる意外さが、この模様の魅力です。

同じ円から、別の模様へ

米国メトロポリタン美術館の幾何学模様の教材では、七つの円を重ねた格子から三角形や六角形の模様を作る手順が紹介されています。円は完成した飾りであると同時に、別の形を探すための下書きにもなるのです。

試すなら、まず一つ円を描き、その円周の左右に針を置いて、同じ半径の円を一つずつ重ねます。最初の円との四つの交点にも針を置き、さらに四つ。七つの円の中心に、六枚の花びらのような形が浮かびます。そこで線の交点を結べば、今度は正六角形や二つの三角形が見えてくる。円を描いていたはずなのに、定規で引く直線の模様が現れるのです。

古代カルタゴに由来する円と十字を繰り返したモザイクの実物
カルタゴに由来する円と十字のモザイク。花びらの図と同じ模様ではない。 撮影・制作:14GTR / Wikimedia Commons(CC0。表示用に縮小)

写真は、古代カルタゴで作られた円と十字のモザイクです。花びらの図と同じ模様ではありません。円を繰り返すという発想が、場所や時代によって違う姿になる例として見てください。床を飾る石の一片ずつにも、描かれた線とは別の手間が残っています。

「神聖」は、どこにあるのか

今日、円の重なりに宇宙や生命の意味を重ねる人もいます。ただ、同じ形を見つけたからといって、昔の作り手が皆、現代と同じ意味を込めたとはわかりません。意味を急いで一つに決めるより、コンパスの針を少しずらしただけで、花が現れる瞬間を見てみたい。自分の手でも確かめられる不思議が、そこにあります。

この話の参考資料

冒頭画像は題材から着想したイメージです。本文の実物写真の出典は画像の下に記しました。