新郎が差し出したのは、木彫りの雁。韓国の結婚式に残る誓い

布に包まれた木彫りの雁が卓に置かれた韓国の婚礼のイメージ 恋とご縁
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結婚式の日、新郎が花嫁の家へ一羽の雁を届ける。韓国の古い婚礼では、生きた鳥の代わりに木彫りの雁が使われた。布に包まれた雁を卓に置き、新郎はその前で礼をする。

雁は、生涯つがいで過ごす鳥と考えられていた。だからこの贈り物には、「あなたと長く添い遂げたい」という誓いが託される。たった一羽なのに、二人の約束を表しているのが面白い。

花嫁の家に届くまで

ニューヨークのメトロポリタン美術館には、朝鮮王朝末期から20世紀初めに作られた婚礼用の木の雁が収蔵されている。胴は一本の木から彫られ、頭と首は別の材を組み合わせたものだ。木目まで鳥の姿に取り込んだ、手仕事の温かさが残る。

美術館の解説によれば、雁は新郎側の人に布で包まれて運ばれた。花嫁の家に着くと、新郎が雁を卓に載せ、二度礼をする。言葉だけならその場で消える誓いを、木の形にして相手の家へ届けるのだ。

一羽の雁が、二羽の鴨になっても

近年は、一羽の雁に代わって、二羽一組の木彫りの鴨が飾られることもある。下の写真は、韓国の婚礼で使われる古い木の鴨だ。向かい合う二羽には、これからともに暮らす二人の姿を重ねたくなる。

向かい合う二羽の韓国の婚礼用木彫りの鴨
韓国の婚礼用の木の鴨。写真:Rystheguy / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)

韓国政府の文化紹介では、木の雁や鴨は夫婦の変わらない信頼を表すものとして説明されている。現代の暮らしで、誰もが婚礼の作法をそのまま守るわけではない。それでも鳥の形を残したくなるのは、誓いを「覚えていられる物」にしたいからかもしれない。

式が終わっても、木の鳥は形を残す。二人で暮らす部屋に置けば、あの日の約束をふと思い出すこともあるだろう。婚礼の始まりに木の雁を手渡した人たちは、消えてしまう言葉に、長く触れられる姿を与えたのかもしれない。

この話の参考資料

冒頭の画像は題材から着想したイメージです。実物写真の出典は画像の下に記しました。