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白い布を、色とりどりの花や鳥、ハートが囲んでいます。その間には、糸で縫い取られた文字。模様だと思って近づくと、飾りの中に短い詩まで縫い込まれていると分かります。
ポルトガル北部のミーニョ地方に伝わる「レンソ・デ・ナモラードス」は、恋人のハンカチという意味の刺繍の布。気になる相手に手渡し、気持ちを伝えるために作られました。返事は、受け取った人がその布をどう扱うかに表れたといいます。
そのハンカチを、外で身につける
ミーニョのヴィラ・ヴェルデ自治体は、女性が刺繍したハンカチを相手の男性へ渡し、男性が公の場で使うかどうかが、交際の始まりを決めたと紹介しています。
受け取ってしまっておくことと、人前に持ち出すこと。その間に、気持ちを受け入れたと周囲にも伝える違いがありました。二人の間を行き来した一枚が、人に見えるしるしにもなるのです。
首に巻いたり、ポケットから端をのぞかせたりするときには、布を折ります。ミーニョの工芸の仕様書は、こうした使い方が、四隅を念入りに飾る理由にもなっていたと説明しています。広げたときの美しさと、身につけて見せる部分の両方が考えられていました。
もとは若い女性の衣装を飾る役目もあった、麻や綿の四角い布です。その布に、思う相手のための模様と言葉を加える。贈り物になるまでには、一針ずつ刺す時間があります。自治体の解説には、何週間、ときには何か月も、夜の時間を使って仕上げたことが記されています。

話し言葉も、短い詩も、糸で残す
ハンカチの文字には、標準的なポルトガル語の綴りと異なるものもあります。ヴィラ・ヴェルデの説明は、その背景に、十分な学校教育を受けられなかった農村の女性たちの暮らしや、地域の発音があるとしています。
冒頭の写真では、心と目を「二人の忠実な友」にたとえています。心が悲しいと、目がそのしるしを見せるという言葉です。文字だけならすぐに読める短い詩を、ここでは花や鳥と一緒に、一針ずつ縫っています。
刺繍は文字を選ぶだけで終わりません。どこから縫い始め、花の間にどう収めるか、角の模様とどうつなぐか。一枚の布の中で、言葉も絵の一部になります。折って身につけたときに見える角と、広げたときに初めて読める部分があるのも、布の手紙ならではです。
赤と黒から、鮮やかな色へ
古いハンカチには、赤や黒の糸を使い、小さな交差を重ねるクロスステッチで刺したものが残っています。その後、色数や縫い方、模様の形は変わってきました。
工芸品の認証のためにまとめられたミーニョの仕様書は、色糸が手に入りやすくなったことと、二十世紀初めからの色彩の変化を結びつけています。現在よく目にする明るい多色の刺繍にも、材料を手に入れ、作り方を選んできた歴史があるのです。
起源についても、分かることと分からないことがあります。貴族のハンカチが民間へ広まったという説は知られていますが、この仕様書は、始まりを裏づける文書が十分にないと指摘します。確かな制作物が残る時代から、模様や用途の変化をたどるほうが、この布の歩みを具体的に見られます。
今の一枚にも、贈る相手がいる
現在のヴィラ・ヴェルデには、アリアンサ・アルテザナルという工芸の拠点があり、刺繍を担う人から歴史や技術を学べます。ハンカチは恋人への告白だけに使われる品から、家族や友人への贈り物、地域の手仕事を伝える品へと用途を広げています。
本文の写真にある一枚は、家の静けさと、外の世界から隔ててくれる扉をたたえる詩句を刺したものです。今作られる一枚が、昔と同じ交際の返事を待つとは限りません。花やハートとともに残す言葉にも、作り手ごとの選び方があるのです。
花も鳥も鮮やかな一枚を広げると、まず目は模様を追います。次に文字を見つけ、読み進める。糸で縫い取られた言葉からは、恋の気持ちや、家で過ごす時間など、作り手が大切にしたものも伝わってきます。その言葉を選び、花の間へ一針ずつ収めた人がいた。刺繍の線をたどっていると、針を持った手まで近くに感じられます。
この話の参考資料・写真の出典
アイキャッチ:ブラガの服飾博物館で撮影された、文字と模様を刺繍したハンカチ。 写真:Joseolgon / Wikimedia Commons(CC BY 4.0、縮小・JPG変換)。


