空を飛ぶ鉄の都は、突然消える。インドの物語『サウバ』

古代インドの海辺の町の上に浮かぶ巨大な鉄の都を描いたイメージ 世界の不思議
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空に鉄の都が現れ、地上の町へ石や木を降らせる。見上げる人々には、一つだった都がいくつにも増えたように見える。次の瞬間、もうどこにもいない。

インドの古典『バーガヴァタ・プラーナ』に登場する、空飛ぶ都「サウバ」の話です。襲われたのは、英雄クリシュナの一族が暮らすドワールカー。都を率いるのは、クリシュナたちに恨みを抱く王シャールヴァでした。

王が望んだ、空を行く鉄の都

シャールヴァは以前の戦いでクリシュナの一族に敗れ、復讐を誓います。そして神シヴァに一年間の苦行を捧げ、行きたいところへ飛べる、敵が恐れる乗り物を願いました。シヴァの命を受け、伝説の工匠マヤが造ったのがサウバです。

原典はそれを「空を飛ぶ鉄の都」と呼び、同時に乗り物としても語ります。どんな形だったかを一枚の図に決めるより、まずは鉄の城塞ほど大きなものが、意のままに移動する様子を思い浮かべてください。シャールヴァはそれに乗り、ドワールカーへ向かいます。

見えたと思うと、もういない

地上では町の門や建物が壊され、空から石や木が降る。風が巻き起こり、あたりは砂ぼこりで見えなくなります。それだけでも恐ろしいのに、サウバは場所をつかませません。

あるときはいくつも並んで見え、あるときは一つに戻る。姿が見えたかと思えば消え、空から山頂へ、水の上へと現れる。原典が繰り返し描くのは、空を飛ぶ速さ以上に、「いま、どこにいるのか」がわからない怖さです。

空に現れたいくつもの鉄の都を城壁から見上げる情景のイメージ
空を飛ぶ鉄の都サウバが姿を変える場面を描いたイメージ。

地上の兵たちは矢を放ちます。それでも、狙った場所に次の瞬間も都があるとは限らない。サウバが一つなのか、いくつもあるのかさえ確信できません。攻められる側から見れば、城壁の外に敵がいる通常の戦いとは、空の見え方そのものが違ったはずです。

鉄の都が海へ落ちるとき

やがてクリシュナが戻り、シャールヴァと向き合います。シャールヴァは、クリシュナの父が捕らえられ、殺されたように見せる幻まで使う。敵を惑わせるのは、サウバの動きだけではありません。

しかしクリシュナは幻を見抜き、サウバを棍棒で打ち砕きます。空にあった鉄の都は、ばらばらになって海へ落ちました。

空中にそびえる鉄の都は、それだけでも目を奪う光景です。けれどこの物語で後を引くのは、見つけたと思ったものが消え、別の場所から現れる感覚でしょう。どこを見上げればよいのかもわからない。その不安が、鉄の都をただ大きいだけの城より恐ろしくしています。

この話の参考資料

掲載した二枚は、古典に描かれたサウバを想像した情景です。