夢で見た生きものを、紙で作る。メキシコのアレブリヘ

鮮やかな青や黄色で彩られ、翼や牙を持つ大型のアレブリヘ 世界の不思議
写真:Paul Asman and Jill Lenoble / Wikimedia Commons(CC BY 2.0、縮小・JPG変換)
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翼があるのに鳥ではなく、牙があるのに獣とも言い切れない。赤や青の模様をまとった生きものたちを見ていると、動物図鑑の分類が役に立たなくなる。メキシコのアレブリヘは、異なる動物の姿を組み合わせ、想像の中から作り出す造形だ。

その鮮やかさから、はるかな古代から伝わる神獣のようにも見える。けれど、いま知られるアレブリヘの歴史をたどると、二十世紀の一人の職人と、その人が見たという夢に出会う。

熱にうなされた夢が、紙の生きものになった

生みの親として知られるのは、メキシコシティのペドロ・リナレス。紙と糊で立体を作る職人だった。メキシコの文化当局が紹介する家族の語りによれば、リナレスは病に伏していたとき、奇妙な生きものが現れる夢を見た。その中で響いた言葉が「アレブリヘ」だったという。

夢から覚めたあと、彼はその姿を、慣れ親しんだ紙細工で形にしたと伝えられる。夢の年代や細部には異なる紹介もあるが、発端にリナレスの夢を置く話は、現在も家族や文化施設によって受け継がれている。

ここでおもしろいのは、作り方のほうは、夢の外にあったことだ。紙を貼り、乾かし、色を塗る。国立民衆文化博物館が所蔵するアレブリヘにも、針金の骨組みに紙と糊を重ねた構造が説明されている。頭の中の奇妙な姿を立たせたのは、職人が積んできた具体的な技術だった。

私は、夢そのものよりも、覚めてからそれを作り始めたところが好きだ。人に説明しにくいものを、紙なら見せられる。見る側も、相手の夢を信じるかどうか決める前に、その形のおかしさや美しさを楽しめる。

木で作る町には、別の手仕事がある

アレブリヘを探していると、紙の大型作品とは違う、小さな木彫りの動物にも出会う。オアハカ州で発展してきた木彫りの系譜だ。紙の技法と、土地の木彫りを、最初から一つのものだったように読むと、それぞれの職人の仕事が見えにくくなる。

オアハカの観光当局は、サン・マルティン・ティルカヘテの手仕事について、二十世紀後半、リナレスの創作から影響を受け、地域のコパルの木を使って発展したと紹介している。家族の工房で木を削り、乾かし、細かな模様を描いていく。

細かな幾何学模様をまとったオアハカの木彫りの空想動物
フリーダ・カーロ博物館で展示されたオアハカの木彫り作品。 写真:Rebeccananonof / Wikimedia Commons(CC0、縮小・JPG変換)。

木目や節のある素材から形を取り出す仕事と、骨組みの上に紙を貼り広げる仕事。同じ想像の生きものでも、体の作り方が違う。並んだ作品の大きさや姿の差には、自由な発想だけでなく、手にしている素材の違いも表れる。

木を使い続けるには、木が育つ場所も必要になる。ティルカヘテではコパルなどの植林も行われているという。売り場の鮮やかな一体の後ろに、木を育て、材料を用意し、作る技術を伝える仕事がある。

この生きものの役目を、急いで決めない

翼、角、長い尾、細かな点や縞。作品を眺めていると、何を守る生きものなのか、どんな力を持つのかと、つい物語を付けたくなる。そう思わせるほど、一体ずつに強い表情がある。

ただ、作品すべてに共通する古代の役目があるわけではない。リナレスの創作を引き継ぐ紙細工も、オアハカの家族の工房で生まれる木彫りも、作り手の想像が形を変え続けている。まず目の前の作品を見て、誰が、何から作ったのかを知りたい。

その先で、自分には何に見えるかを考える余地がある。怖い顔なのに、どこか愉快。色がぶつかっているのに、全体では一つの生きものに見える。アレブリヘには、正しい名前を教わるより前に、目のほうが楽しみ始める魅力がある。

想像の生きものを、誰かが本当に作ってしまう。その一体を見た別の誰かが、また違う姿を思いつく。夢は一人の内側で終わらず、紙と木を通じて、人の間を歩き続けている。

この話の参考資料・写真の出典

冒頭の写真:動物の姿を組み合わせた大型のアレブリヘ。 写真:Paul Asman and Jill Lenoble / Wikimedia Commons(CC BY 2.0、縮小・JPG変換)。