端末の音声で読み上げます
もっと自然な音声で聴くには
お使いのブラウザーに備わっている読み上げ機能もご利用いただけます。
iPhone・iPad:Safari
- Safariでこの記事を開きます。
- アドレス欄の左端にあるページメニューボタンをタップします。
- 「ページの読み上げを聞く」を選びます。
Android:Chrome
- Chromeでこの記事を開きます。
- 右上の「︙」メニューを開き、「このページを読み上げ」を選びます。
- 再生画面で声や速度を調整できます。再生モードが表示される場合は、「標準の再生」を選ぶと記事の全文を聴けます。
項目が表示されない場合は、Chromeの公式ヘルプで利用条件をご確認ください。
PC:Microsoft Edge
- Microsoft Edgeでこの記事を開きます。
- 記事本文の上で右クリックし、「音声で読み上げる」を選びます。
- 画面上部の「音声オプション」で、声や速度を変更できます。
Windowsでは、Ctrl+Shift+Uでも読み上げを開始・停止できます。Edgeの公式手順
メニュー名や利用できる機能は、ブラウザーのバージョンやページによって異なる場合があります。
「盗まれた手袋を取り返してください」。古代の神への願いが、そんな身近な怒りから始まることがあります。ローマ時代のブリテンで使われた薄い鉛板には、盗んだ相手を神が罰するようにと書かれたものが残っています。「呪詛板」と呼ばれる小さな板です。
大英博物館が所蔵する一枚は、イングランドのグロスターシャー州ウーリーで見つかりました。失ったのは手袋。書き手は商売や戦争の勝利ではなく、見知らぬ盗人への腹立ちを、神メルクリウスに訴えています。
小さな鉛板に、大きな怒り
この板は文を書いた面を内側にして何度も折られていました。博物館の解説では、盗人から血や健康を奪うよう求める激しい言葉も読めます。今なら手袋のためにそこまで、と驚くかもしれません。けれど、持ち物を失ったうえに相手もわからない無力さは、時代が違っても想像できます。
板の大きさは手のひらほど。内側に七行、外側に一行の文字があり、書いたあと五回折られたと大英博物館は記しています。人に読ませるための掲示ではなく、神に渡す訴えです。薄い鉛の中へ怒りを折り込んでしまう、その手順まで実物に残っています。

写真はイングランドの別の町、バースに残る呪詛板です。手袋の板そのものではありません。ローマ時代のブリテンでは、ウーリーだけでなくバースにも、盗難や恨みを神に託した人々の痕跡が残っています。
ウーリーの遺跡からは、メルクリウスに宛てた鉛板が数多く見つかっています。失くした品も、願い方も一つではありません。博物館は、こうした文を本人が書いたのか、代筆する人がいたのかは分かっていないとします。けれど、手袋を盗まれた怒りだけは、文字を越えてはっきり伝わってきます。
神への手紙は、生活の記録でもある
物騒な文言の向こうに見えるのは、手袋を使い、盗まれて困った一人の暮らしです。歴史に名前の残らない人の声が、鉛の薄板にだけ残った。願い事が立派でなければならないとは、当時の人も思っていなかったようです。


