神々も人間も、一本の木のそばにいる。北欧神話の世界樹ユグドラシル

北欧の夜空とフィヨルドの上にそびえる巨大な世界樹を描いた情景 世界の不思議
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神々の世界と人の世界を、一本の木がつないでいる。北欧神話の世界樹「ユグドラシル」は、空へ伸びる枝と、地の下へ広がる根を持つ巨大な木です。神のいる場所、人間の暮らす場所、巨人たちの領域。その隔たりを、木の姿で思い描いた物語が残っています。

北欧神話と聞くと、雷神トールや知恵を求めるオーディンが先に浮かぶかもしれません。ユグドラシルは、そうした登場人物が行き来する世界の背景です。ただ、現代の図解のように「九つの世界が枝のどこにあるか」まで、一枚の決まった地図が古くから伝わっているわけではありません。

根元にいる、運命を知る者たち

木のそばには「ノルン」と呼ばれる、運命に関わる女性たちがいます。ノルウェーの歴史博物館の紹介では、三人が過去、現在、未来を担い、人にも神にもそれぞれの糸を与えます。その長さが命の長さになるというのです。彼女たちは、世界樹の世話もします。世界の運命に関わる者が、その世界を支える木の手入れもしているのです。

十七世紀のアイスランドの写本に描かれた北欧神話の世界樹
十七世紀のアイスランドの写本に描かれたユグドラシル。 作者不詳 / Wikimedia Commons(パブリックドメイン。表示用に縮小)

写真ではなく、十七世紀のアイスランドの写本に描かれたユグドラシルの図です。北欧神話が語られた時代そのものの絵ではありません。それでも、巨大な木のまわりに生き物や世界を集めた想像が、後の時代にも読み継がれたことがわかります。

木の上と下を、声が走る

枝の上には鳥、根の近くにはそれをかじる生き物。そして、幹を上下するリス「ラタトスク」がいます。歴史博物館が紹介するのは、木の上と下へ知らせやうわさ話を運ぶ、いたずら好きな姿です。小さなリスが走るたび、離れた場所の声が届いていくのです。

ユグドラシルを知ると、北欧神話の出来事は一つの地面の上だけで起きていないと気づきます。神と人、地上と地下が離れていても、同じ木のそばにいる。その広さと近さを、枝と根が同時に見せてくれます。

この話の参考資料

冒頭画像は題材から着想したイメージです。本文の実物写真の出典は画像の下に記しました。