見えない守り手のために、道路は曲がった。ニュージーランドのタニファ

ニュージーランドの深い森に囲まれた川と朝霧 世界の不思議
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道路を造る予定地に、守り手のすみかがあると声が上がった。二〇〇二年、ニュージーランドのワイカト地方で、幹線道路の計画を一部変えることになった。理由の一つは、マオリの伝承に登場する「タニファ」のすみかを守りたいという地元の人々の思いだった。

タニファは、川や湖、海、洞窟などにいると語られる超自然的な存在。恐ろしいものとして語られることもあれば、人を守る存在として敬われることもある。形も一つではない。ニュージーランドの百科事典「Te Ara」は、蛇や龍に似た姿から、サメや流木の姿まで、さまざまな伝承を紹介している。

同じ百科事典には、滝へ流されそうになった舟を助けた、ヒネ・コーラコというタニファの話も載る。人を襲うものもいれば、水辺で人を守るものもいる。「タニファ」という一語だけで、姿も役割も決められない。

道路の下に消したくなかった場所

ワイカト地方のマオリの一派、ンガーティ・ナホの人々は、計画された道路がカルタヒというタニファのすみかを壊すと訴えた。道路を管理する側は協議の末、線形を一部変えた。伝承が現実の地図に影響した、珍しい出来事だ。

当時のニュース映像も「Te Ara」で紹介されている。ンガーティ・ナホ側のリマ・ハーバートは、この変更を双方にとってよい解決として受け止めた。道を通すことと、そこに伝わる場所を残すこと。その二つを同じ地図の上で考えた結果だった。

写真はワイカト川の実際の風景。カルタヒのすみかを撮ったものではない。それでも、川や周囲の土地が、単なる空き地ではないことを考える入り口にはなる。

ニュージーランドのワイカト川を写した実際の風景
ワイカト川の風景。カルタヒのすみかを写したものではない。 写真:Johnragla / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0。表示用に縮小)

見えない存在を、どう扱うか

タニファが実在するかを問うだけでは、土地に暮らす人々の思いは見えてこない。ある場所を長く大切にしてきた人にとって、川の曲がり角や岸辺には、名を持つ物語がある。工事は土を動かすだけでなく、その物語の場所を変えてしまう。

道は必要だった。そして、土地への思いも無視できなかった。線を少し曲げるという結末には、どちらかの声を消さずに暮らすための工夫が残っている。

ただ、伝承があれば必ず計画が変わるわけではない。ニュージーランド北部では、タニファの通り道を理由に刑務所の建設に反対する声があったが、工事は進められた。同じ国の中でも結末は違う。カルタヒの話が印象に残るのは、見えない存在をめぐる訴えが、実際に道路の線を動かしたからだ。

この話の参考資料

冒頭画像は題材から着想した再現画です。本文の実物写真の出典は画像の下に記しました。