木の板に並ぶ小さな姿。ラパ・ヌイに残されたロンゴロンゴ

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木の表面に、小さな姿がぎっしり並んでいます。鳥のような頭、立っている人、草木を思わせる形。太平洋の島ラパ・ヌイ、イースター島の名でも知られる土地に伝わった「ロンゴロンゴ」の記号です。

モアイ像とはまた違う、この島の知的な営みを伝える資料。しかし、これらの記号の意味は、今も十分に解読されていません。何かを伝えようとして刻まれたことは分かるのに、その言葉に届かない。木の板には、そんな近さと遠さが同居しています。

隣の行では、姿が逆さになる

ロンゴロンゴの板を眺めると、まず記号の多さに目を奪われます。次に気づくのは、行によって、人や鳥のような姿の向きが逆になっていることです。

記号の意味は十分に解読されていませんが、行のたどり方には手がかりがあります。オーストラリア博物館は、一行ごとに板を180度回して次の行を読む方式だったと紹介しています。隣の行へ移るたびに、手の中で板の上下を逆にしていたのです。

読めないからといって、何も手がかりがないわけではありません。行の配置、繰り返す形、木に刻まれた線の深さ。意味を言い当てる前にも、観察できることはあります。

木の表面の溝に小さな記号が刻まれたロンゴロンゴの板
ビショップ博物館のロンゴロンゴの木板「ホノルル1」(資料記号T)。本文で紹介するローマの年代測定資料とは別のもの。 写真:christopherhu / Wikimedia Commons(CC BY 2.0、縮小・JPG変換)。

「鳥がいる」だけでは、文章は読めない

鳥に似た記号を見つけても、それがそのまま「鳥」という単語だとは限りません。音を示すのか、意味を示すのか、別の記号と一緒に働くのか。姿を見て名前をつけることと、文章を読むことの間には、大きな距離があります。

現存する資料は二十数点と限られ、世界の博物館などに分散しています。ホノルルのビショップ博物館も、ラパ・ヌイの人々が生んだ未解読の文字として、所蔵する板を紹介しています。

板には欠けたり傷んだりした部分もあり、記号の形を確かめるための材料は限られています。残された線や記号の繰り返しを比べることも、読み解く手がかりを探す作業です。行の向きや同じ形の現れ方を追いながら、一つずつ確かめていく必要があります。

木の年齢から、文字の始まりを探る

解読とは別の方向から、板へ近づく研究もあります。2024年に学術誌『Scientific Reports』に掲載された研究は、ローマに保管された四点のロンゴロンゴ資料を対象に、木材の年代を推定する放射性炭素年代測定を行いました。

そのうち一点では、木を伐った時期が15世紀末から16世紀初めごろと推定されました。ヨーロッパ人が島へ到来した18世紀より古い木だったため、文字が外部との接触より前からあった可能性を考える材料になりました。

ただし、研究者たちも、木の年代と刻んだ年代が同じとは限らないと注意しています。古い木を長く保管したあとで彫ることもあり得るからです。木材の調査は、文字の成立時期を考える手がかりになりますが、一行の意味まで明らかにするものではありません。

それでも、表面の形だけを比べるのとは違う入口が開きます。この木はいつ育ち、いつ伐られたのか。刻まれた形の比較とは別に、素材を調べる方法でも文字の歴史を探れるのです。

未解読の文字にも、受け継がれた話がある

オーストラリア博物館は、ラパ・ヌイの芸術家ビクトル・パコミオらから伝えられた知識も紹介しています。記号を一つずつ解読する研究とは別に、島には、板が何を伝えていたかを語る伝承があります。

同館で紹介されるのは、火災で失われた原品をもとに、パコミオが彫った復元の板です。彼は、星や月の巡り、漁や栽培の時期に関わる知識が伝えられてきたと説明しています。これは文字を一つずつ訳した解読文とは違いますが、板が暮らしと切り離された謎の飾りではなかったことを伝えます。

十九世紀の疫病や奴隷狩り、信仰への干渉は、知識を伝える人々のつながりを大きく傷つけました。残された板を調べることは、その背後で文字を学び、教えていた人々の歴史をたどることでもあります。

ロンゴロンゴを見るときは、まず一つの形を見つけ、次の行でその向きを追ってみる。それから、木を持って読んだ人の姿を思い浮かべる。まだ訳せない板の前にも、作り、学び、受け継いだ人たちの仕事は、確かに残っています。

この話の参考資料・写真の出典

アイキャッチ:ラパ・ヌイの海岸。ロンゴロンゴはこの島に伝わった記号の体系。 写真:Otávio Nogueira from Fortaleza, BR / Wikimedia Commons(CC BY 2.0、縮小・JPG変換)。