草原の丸い空白は、誰が作る? ナミビアのフェアリー・サークル

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乾いた草原に、丸く草の生えていない場所が点々と続いています。一つずつは地面の空白なのに、上空から眺めると、大きな模様になる。アフリカ南西部、ナミビアの「フェアリー・サークル」です。

妖精の輪という名前が付いていますが、研究者が調べているのは、草や土、水、そして地中の小さな生き物です。丸い場所の中で何が起き、隣の円とはどう関係するのか。この景色は、見えている輪郭の下まで調べるほど、不思議さを増していきます。

草がない場所に、水が残る

フェアリー・サークルには、直径四〜十メートルほどのものがよく見られ、周囲に背の高い草が生えることがあります。とりわけ円が密に並ぶ場所では、互いの間隔にも規則性が見られます。丸い穴があるだけでなく、その並び方までが研究の対象です。

草がないなら、そこだけ特に乾いているようにも見えます。ところが、雨の後、円の地下の深いところには、周囲より多くの水が残ることが分かっています。表面がむき出しであることと、地下に水があることが、同じ場所で起きているのです。

なぜ水があっても、草は育ち続けられないのか。水の量だけでなく、どの深さにあり、根がそこまで届くのかを考える必要が出てきます。地面の写真には写らない条件が、草のある場所とない場所を分けています。

ナミビアのマリエンフルス谷で、低い草に囲まれた赤茶色の丸い裸地
マリエンフルス谷のフェアリー・サークル。地上では、草の中に丸い空白が開いて見える。 写真:Thorsten Becker (= Beavis729, Beavis729) / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0 de、縮小・JPG変換)。

雨の後、若い草が枯れる

ゲッティンゲン大学の研究チームは、雨の後に生える草を追い、円の内外の土壌水分や根を調べました。二〇二二年に公表した結果では、雨から約二十日後には円の中の若い草が枯れていましたが、根にシロアリが食べた跡はありませんでした。根の傷みが目立つようになったのは、雨から五十〜六十日後。草が枯れた時点では根が傷んでいなかったことを、チームは重く見ています。

チームが考える仕組みは、周囲に育った草の根が水を引き寄せ、円の中で芽生えた若い草が十分な水を得られなくなるというものです。深いところに水が残っていても、短い根では届きにくい。草の有無が、さらに水の分かれ方へ影響します。

誰かが全体の模様を決めなくても、近くの植物同士の影響が重なり、規則的な並びが生まれる。この考え方を、植物の「自己組織化」と呼びます。

同チームの二〇二四年の研究は、複数の場所をドローンで繰り返し撮影し、雨の後の変化も調べています。干ばつ後に十分な雨が降ると、草が生えて閉じる円もありました。空から見える模様は、いつも同じ輪郭で止まっているわけではありません。

シロアリが、水をためる場所を作る?

別の説明を続けているのが、ハンブルク大学のノルベルト・ユルゲンスらです。地下に暮らすシロアリが植物を取り除き、むき出しの地面を保つ。その結果、植物に消費されない水が地下に長く残るという考え方です。

同大学の二〇二三年の発表は、多くの円でシロアリの存在を確認したことや、複数の深さで測った水の状態を根拠に挙げています。水分の少ない砂の中で、周囲の草まで十分な速さで水が移動できるのか、という点にも疑問を示しています。

一方の研究者が、枯れた時点で草の根が食べられていなかったことを重く見れば、もう一方は、地下の虫と水の蓄え方に目を向ける。同じ現象を調べても、何が原因で、何がその後に起きたことなのかで、説明が分かれています。

円の「その後」まで、見続ける

二〇二五年の研究レビューは、植物の自己組織化を、観測結果とつながる説明として評価しています。同時に、地下の水や栄養が実際にどう動くかを直接示す証拠には、なお課題があると指摘します。

シロアリ説についても、巣と円の位置関係や、円の長い存続をどう説明するかに問題が残るとしています。次に必要なのは、虫の有無、水や栄養の条件を変える実験と、円が生まれたり閉じたりする過程の長期的な観測です。

地上で一つの円を見ると、草に囲まれた空き地です。上空へ視点を移すと、その隣にも、さらに向こうにも似た場所がある。そこへ時間を加えると、雨を受けて芽が出て、残るものと枯れるものに分かれていきます。

一枚の写真で静かに見える景色の中で、水と根と虫は動き続けています。丸い空白は、何もない場所というより、地中の出来事が表面へ現れた形なのかもしれません。

この話の参考資料・写真の出典

アイキャッチ:上空から見たナミビアのフェアリー・サークル(二〇一七年撮影)。円とその並び方が研究されている。 写真:Olga Ernst & Hp.Baumeler / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、縮小・JPG変換)。