春を見つけたら、赤と白の糸を木に結ぶ。東欧の小さなお守り

早春の枝に赤と白の糸の飾りが揺れる情景 願いと引き寄せ
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三月の初め、手首や胸に赤と白の糸を結ぶ。春を迎える東ヨーロッパの風習に登場する、小さな飾りです。ブルガリアでは「マルテニツァ」、ルーマニアでは「マルツィショル」などと呼ばれ、国や土地によって形も飾り方も変わります。

赤と白の糸をより合わせたものから、人形や花の形に仕立てたものまで。これを贈り合い、身につけて春を待つ。寒さがまだ残る時期に、身体に先に春の色をつけるような習わしです。

この糸には、急に変わる天候などから身を守り、冬から春へ無事に移れるようにという願いも込められています。見た目は小さな飾りでも、渡す人は相手の新しい季節を気にかけている。春を祝う色と、お守りの意味が一本により合わされています。

花が咲いたら、糸を外す

国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、この三月一日に結びつく文化を、四つの国にまたがる無形文化遺産として紹介しています。木に花が咲いたり、渡り鳥を見たりしたときに飾りを外すという伝えもあります。外した糸を木に結ぶ土地があるため、枝いっぱいに赤と白が揺れる風景も生まれました。

外す合図は、暦の日付だけではありません。最初の花が咲く木、飛んできたツバメやコウノトリ。自分の目で春を見つけたとき、手首の糸をほどくのです。写真の木に集まった飾りも、それぞれ誰かが「春が来た」と気づいた跡なのでしょう。

春を迎える赤と白の飾りが実際に結ばれた木
木の枝に結ばれた赤と白の春の飾り。 写真:Vassia Atanassova – Spiritia / Wikimedia Commons(Public domain。表示用に縮小)

写真の枝に掛かっているのは、そうした春の飾りです。最初から木につけるためだけの品ではありません。誰かの手首や服にあった小さな春が、季節の変化を見つけて、外の木へ移ったものとも言えます。

二色に託す、季節の境目

赤は生命、白は清らかさなどと説明されることがあります。ただ、意味を一つに固定するより、贈る相手と、外す日の空模様を思い浮かべたくなります。暦の上の三月一日と、目の前に来た春。その間を、細い糸がつないでいます。

この話の参考資料

冒頭画像は題材から着想したイメージです。本文の実物写真の出典は画像の下に記しました。