道端の小さな花籠は、誰への贈り物? バリのチャナン・サリ

葉の器に色とりどりの花を盛ったバリの供え物チャナン・サリ 願いと引き寄せ
写真:Dennis Sylvester Hurd / Wikimedia Commons(CC0)
もっと自然な音声で聴くには

お使いのブラウザーに備わっている読み上げ機能もご利用いただけます。

iPhone・iPad:Safari

  1. Safariでこの記事を開きます。
  2. アドレス欄の左端にあるページメニューボタンをタップします。
  3. 「ページの読み上げを聞く」を選びます。

Safariの公式手順

Android:Chrome

  1. Chromeでこの記事を開きます。
  2. 右上の「︙」メニューを開き、「このページを読み上げ」を選びます。
  3. 再生画面で声や速度を調整できます。再生モードが表示される場合は、「標準の再生」を選ぶと記事の全文を聴けます。

項目が表示されない場合は、Chromeの公式ヘルプで利用条件をご確認ください。

PC:Microsoft Edge

  1. Microsoft Edgeでこの記事を開きます。
  2. 記事本文の上で右クリックし、「音声で読み上げる」を選びます。
  3. 画面上部の「音声オプション」で、声や速度を変更できます。

Windowsでは、Ctrl+Shift+Uでも読み上げを開始・停止できます。Edgeの公式手順

メニュー名や利用できる機能は、ブラウザーのバージョンやページによって異なる場合があります。

バリ島の道端には、花を盛った小さな器が置かれています。黄色、白、赤の花びらに、米や食べ物、一本の香。店先にも家の入口にもあるので、初めて見ると、誰かが置き忘れた飾りのように思えるかもしれません。

これは「チャナン・サリ」と呼ばれる、バリのヒンドゥー教徒が日々捧げる供え物です。特別な祝祭のためだけに用意するものではありません。家を出入りする足元に、神へ感謝を伝える場所があるのです。

小さな葉の器に、何を入れるのか

バリの文化を紹介するサカ博物館は、チャナン・サリを、日常でもっともよく見られる簡素な供え物として説明しています。器はヤシの若い葉を編んだもの。花や米、硬貨、植物の葉や実を組み合わせた供え物などを入れ、香を添えます。

写真を見ると、葉を折った角や、器からはみ出す花びらまで分かります。市販の小さな菓子や果物を添えたものもある。形を長く残すための工芸品というより、その日に捧げるために、身近なものを取り合わせた姿です。

花に添える「ポロサン」も、祈りを表す供え物です。キンマという植物の葉に、ビンロウの実や石灰を組み合わせて作ります。ブレレン県文化観光局の紹介では、神へ真心を込めて捧げるという意味が託されています。鮮やかな花のそばにある小さな材料も、祈りの一部なのです。

バリ島チャングーの砂浜に置かれた二つのチャナン・サリと香
チャングーの砂浜に置かれた供え物。葉の器と、添えられた香が見える。 写真:Mx. Granger / Wikimedia Commons(CC0、縮小・JPG変換)。

「これをください」の前に、感謝を置く

誰に向けて花を並べているのでしょう。サカ博物館の説明では、捧げる先はバリ・ヒンドゥーの神、イダ・サン・ヒャン・ウィディ・ワサ。世界に与えられた平和や調和への感謝を表し、美しさを願う行為でもあるとされます。

宗教省ブレレン県事務所も、世界に平穏が与えられていることへの感謝と説明しています。花や香を供える日々の祈りには、すでに受け取っている恵みに、あらためてお礼を伝える意味があるのです。

家の祭壇に置くものや、大きな行事で使うものなど、バリの供え物にはさまざまな種類があります。チャナン・サリは、その中でも日々の生活で繰り返し供える、小さく身近な一皿です。

花と一緒に、手間も捧げている

花籠は小さい。けれど、葉で器を作り、材料を選び、きちんと配置するには、手と時間が要ります。宗教省の説明は、この準備に費やす労力も、捧げる行為の一部として捉えています。

サカ博物館では、材料を丁寧に取り合わせる過程を「メタディング」と紹介しています。葉の器を編み、花を選んで丁寧に並べる。完成した籠だけを見ると分からない、その準備の時間も供えられています。

この供え物は、家の祭壇だけに収まりません。博物館の案内に挙がるのは、家や寺院の入口、交差点、農家の田畑にある祠。生活の場を歩いていくと、仕事や家事と祈りが、遠く離れた場所で行われているわけではないと分かります。

玄関や田畑で目にする籠の一つひとつにも、用意して運んだ人がいます。生活のすぐそばに置かれた花から、祈りに費やした手間も想像できます。

供え物を見つけたら、よけて歩く

インドネシア政府の観光案内は、地面にあるチャナン・サリを踏まないようにし、供え物のために場所をあけるよう呼びかけています。写真を撮る際も、儀式の途中なら、先に許可を得るよう案内しています。

特別な知識がなくてもできることです。器のすぐ横を歩くときに足の置き場を確かめる。撮影のために勝手に動かさない。花が鮮やかだからと、自分の写真の小道具にしてしまわない。そのわずかな距離が、祈りを日常のまま残します。

大きな寺院の門や石像を見上げていた目を、足元へ戻す。そこにある葉の器からも、バリの信仰は伝わってきます。花を供える場所が玄関や仕事場のすぐそばにある。その近さに、この島の日々の祈りが表れています。

この話の参考資料・写真の出典

アイキャッチ:バリのチャナン・サリ。葉の器に花や食べ物が盛られている。 写真:Dennis Sylvester Hurd / Wikimedia Commons(CC0、縮小・JPG変換)。