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悩みへの答えを、夢の中で待つ。そのために、わざわざ神殿へ泊まりに行く人たちがいた。古代ギリシャの医神アスクレピオスを祀る聖域には、祈るだけでなく、眠るための場所が設けられていた。
もっとも、寝れば神のお告げが必ず聞けるという話ではない。病を抱えた人々は清めや祈りを行い、夜を迎えた。メトロポリタン美術館の解説では、夢の中に医神が現れ、治療の仕方を示すと信じられたという。古代の信仰と医療が、同じ場所で重なっていた。
答えを待つための一夜
ギリシャのエピダウロスには、その眠りの場とされる長い建物の遺構が残る。アバトンという名で知られ、柱が続く回廊の姿を、今も見ることができる。写真の石柱を前にすると、夢のような話が、実際に人の足を運ばせたことが分かる。

家で眠るのとは違い、人々は聖域へ足を運び、清めや祈りを経て一夜を過ごした。眠りは、目を閉じる前から始まる儀礼でもあった。夢の中で示されるという答えを待つために、場所も、夜の迎え方も変えていたのだ。
神殿の石が残したもの
残された建物から、そこに泊まった一人ひとりの夢は読み取れない。治療が実際に効いたかどうかも、この話だけでは分からない。ただ、病や不安を抱えた人が「今夜、何かを聞けるかもしれない」と思って眠った場所は、空想ではなく石の上にあった。
横になって夜を待つという行為まで、聖域の建物に組み込まれていた。柱の続く回廊を見ると、夢は一人が眠っている間だけの出来事ではなく、人々が遠くから集まる理由でもあったのだと気づく。


