屋根の上に、牛が二頭。ペルーの家を守る小さな焼き物

もっと自然な音声で聴くには

お使いのブラウザーに備わっている読み上げ機能もご利用いただけます。

iPhone・iPad:Safari

  1. Safariでこの記事を開きます。
  2. アドレス欄の左端にあるページメニューボタンをタップします。
  3. 「ページの読み上げを聞く」を選びます。

Safariの公式手順

Android:Chrome

  1. Chromeでこの記事を開きます。
  2. 右上の「︙」メニューを開き、「このページを読み上げ」を選びます。
  3. 再生画面で声や速度を調整できます。再生モードが表示される場合は、「標準の再生」を選ぶと記事の全文を聴けます。

項目が表示されない場合は、Chromeの公式ヘルプで利用条件をご確認ください。

PC:Microsoft Edge

  1. Microsoft Edgeでこの記事を開きます。
  2. 記事本文の上で右クリックし、「音声で読み上げる」を選びます。
  3. 画面上部の「音声オプション」で、声や速度を変更できます。

Windowsでは、Ctrl+Shift+Uでも読み上げを開始・停止できます。Edgeの公式手順

メニュー名や利用できる機能は、ブラウザーのバージョンやページによって異なる場合があります。

ペルーの山あいの家で、屋根を見上げると、二頭の牛が並んでいることがあります。もちろん、生きた牛ではありません。角を立て、丸い目で前を見る陶器の牛です。二頭の間に十字架を置いたものもあり、屋根の上に小さな祭壇が載っているように見えます。

この牛は「トリート・デ・プカラ」。家を守り、豊かさや家族の幸せを願うために置かれてきた、ペルー南部の焼き物です。家に入る人を迎えるお守りが、ここでは住む人の頭の上にいます。

二頭で、家の暮らしを見守る

ペルーのプカラ自治体は、屋根に置く一対の牛を、保護、繁栄、豊穣の象徴と紹介しています。二頭が並ぶ姿には、結びつきや釣り合いを保つ意味もあるそうです。

公共放送のCanal IPeが紹介する習わしでは、二頭の牛と、その間の十字架を家の最も高い場所に据えます。アンデスに伝わる願いと、スペインから伝わったキリスト教のしるしが、一つの屋根に並ぶのです。

牛は人より高いところから家を見守りますが、その顔は勇ましいばかりではありません。くるりとした角、体に描かれた花や渦、丸く開いた目。小さな体の細部に、手を動かした人の工夫が見えます。

花や渦の模様が描かれた二頭の牛と、間に立つ十字架
二頭のトリートと十字架。体や顔に細かな飾りが付けられている。 写真:PsamatheM / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、縮小・JPG変換)。

名前の町と、作られた村

「プカラの小さな牛」という名前から、すべてがプカラで生まれたようにも思えます。ところがCanal IPeの解説は、最初の牛が作られた場所を、同じプーノ地方のサンティアゴ・デ・ププハとしています。プカラの鉄道駅で売られたため、この名が広まったという説明です。

土を形にした場所と、その品を人々が手に取った場所。名前の背景をたどると、焼き物を作る村だけでなく、それを運んで売る人の仕事も見えてきます。プカラは現在も、政府観光局が陶芸工房を紹介する、焼き物で知られる町です。

牛そのものも、アンデスに古くからいた家畜ではありません。スペイン人の到来に伴って持ち込まれた動物でした。外から来た動物の姿が土地の手仕事に取り込まれ、家を守る役目まで担うようになった。その重なりが、この小さな陶器に残っています。

牛の角が、乾いた岩に触れる

牛にまつわる物語には、水の話もあります。ペルーの政府機関PROMPERÚが紹介する伝説では、干ばつに苦しむ土地の人が、神への供え物として牛を岩山へ連れていきます。抵抗する牛の角が岩に触れると、そこから大量の水が湧き出したのだそうです。

乾いた井戸を前に、暮らしを続けられるだろうかと案じる人々。その窮地を変えたものとして、牛が語られています。家を守るという意味の中には、住まいが無事であることに加え、人や家畜を養う恵みへの願いも読み取れます。

これは牛の焼き物の由来を語る伝説の一つです。別の説明では、植民地時代の祭りで飾り立てられた牛の姿が陶器に写されたとされています。伝わる話は一つに定まらず、土地の祭りや水への願いと結びついているのです。

土から生まれて、屋根へ上がる

トリートには、鮮やかな色を重ねたものも、土の色を生かした落ち着いたものもあります。大きさや仕上げが違っていても、角と目を備えた牛の姿はすぐに分かります。手のひらに載る品から屋根に据えるものまで、同じ形が暮らしのさまざまな場所へ運ばれていきます。

屋根の二頭を見るときは、間に何が置かれているか、体にどんな模様があるかにも目を向けてみたくなります。十字架や花、渦を描いた線が、ただの牛の置物を、その家のために迎えられたものへ変えています。

雨にさらされ、日を受けながら、二頭は同じ方を向いて立つ。陶器の小さな顔の下では、人が食事をし、働き、眠っています。豊かさを願う場所が、暮らしのすぐ上にあるのです。

この話の参考資料・写真の出典

アイキャッチ:ペルーのモリェパタで、屋根の上に据えられた牛と十字架。 写真:Guillermo Carlos Gómez / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、縮小・JPG変換)。