青い目は、何を見返している? トルコのナザール・ボンジュウ

木の枝に掛けられた青い目のガラスのお守りと背後のトルコの街並み 魔術と浄化
写真:Eylulkizil / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
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青いガラスの中心に、白と水色の輪、その奥に黒い点。トルコの土産物店や家の飾りで見かける、目の形のお守りです。このガラス玉は「ナザール・ボンジュウ」と呼ばれ、持ち主を災いから守ると信じられてきました。

相手から向けられた視線が、不幸を運んでくるかもしれない。そうした「邪視」への信仰を背景に、人や暮らしを守るものとして用いられてきました。こちらを見ている青い目は、災いをもたらす目そのものではありません。それを避けるためのしるしです。

お守りは、最初に目に入るところへ

トルコのアンタルヤ県文化観光局は、ナザールのお守りを、邪視の影響を遠ざけると信じられるものとして紹介しています。守りたい人や物の、最初に目に入る場所へ掛けるといいます。

しまっておくより、見えるようにする。その置き方を知ると、大きな目の形にも納得がいきます。家に入ろうとした人、持ち物に目を留めた人の視線が、まずこの目に出会うのです。

文化観光省は、子どもに身につけさせる習わしも紹介しています。災いを避けて健やかに育ってほしいという願いが、小さなガラス玉に託される。怖い視線への備えは、大切なものを見守る行為ともつながっています。

青や白、赤など色や形の異なる目の模様のガラス玉
色や形の違う、目の模様のガラス玉。青い平たい円盤だけが、このお守りの形ではない。 写真:Aliakyuz / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、縮小・JPG変換)。

形も色も、さまざまなお守り

よく知られるのは、青地に同心円の目を配した、平たい円盤です。ただ、実物を見ると、大きさも色も一つではありません。首飾りにできる小さな玉もあれば、壁に掛ける飾り、いくつもの目を組み合わせたものもあります。

イズミル県文化観光局の説明には、円柱や卵のような形、透明な緑色や紫色の玉まで登場します。形、色、目の種類、大きさを組み合わせ、職人たちはさまざまに呼び分けてきました。

一方、アンタルヤで邪視除けとして使われる品は、ガラスの目だけに限りません。馬蹄や植物の枝なども挙げられています。ナザール・ボンジュウは、そうした守りの品の中で、とりわけ目に留まりやすい形を持っているのです。

目は、火のそばで一つずつ作られる

このお守りには、信仰だけでなくガラス工芸の歴史もあります。トルコ西部イズミルのギョレジェやナザールキョイでは、伝統的な方法によるガラス玉の製作が続いていると、文化観光局は紹介しています。

炉は、丸形や楕円形に造られます。松の薪を燃やし、炉の中の区画で色の違うガラスを溶かす。職人は鉄の棒で溶けたガラスを取り出し、鉄のレールの上で形を作ります。店先で冷たく光る目の出発点は、熱いガラスと、それを扱う人の手です。

教育省の職業教育資料は、この地域の職人たちの系譜を、19世紀末ごろにイズミル周辺へ移り住んだアラブ系のガラス職人に結びつけています。炉の煙や火災の問題から、作り手が別の場所へ移った経緯にも触れています。

ガラス玉を作る技術は、職人たちの移住とともに受け継がれてきました。技術を持つ人が移り、燃料を得られる場所に炉を構えた。お守りの青い表面には見えない、仕事の場所を選ぶ歴史があります。

村の名前にまでなった、守りの目

ナザールキョイは、もともとクルデレという名前の村でした。イズミルの文化観光局によると、ガラス玉の製作が盛んなことから、2007年に現在の名前へ改められています。守りの品が、そのまま土地を表す名前にもなったのです。

土産物として買えば、青いガラスのきれいな飾りです。けれど、それを渡す人が「あなたを守りたい」と考えているなら、受け取る意味は少し変わるでしょう。目を向けるたび、贈ってくれた人の願いも思い出す。小さなお守りは、離れて暮らす人の気遣いを、身近に置くものにもなります。

青い目のお守りを見つけたら、輪の形だけでなく、掛けられた場所や、玉ごとのわずかな違いにも目を向けてみる。見ることへの怖れから生まれた品を、今度はこちらがよく見る。その先に、ガラスを作る村と、人を思う習わしが続いています。

この話の参考資料・写真の出典

アイキャッチ:木の枝に掛けられたナザール・ボンジュウ。 写真:Eylulkizil / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0、縮小・JPG変換)。