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金貨の上に座る、三本足のカエル。中国の縁起物として見かける「金蟾(きんせん)」です。見慣れたカエルと違い、足が一本足りない。その奇妙な姿が、かえって目を引きます。
豊かさを呼ぶ置物として売られることも多いけれど、古い作品には別の顔もあります。米ニューヨークのメトロポリタン美術館には、三本足のカエルをかたどった水滴があります。書のために硯へ水を注ぐ道具です。富を願う品が、文字を書く机の上にもいたわけです。
月にもいた、三本足
このカエルは月に住むと語られたり、仙人の劉海(りゅうかい)と結びつけられたりします。写真に写るのは、中国で作られた別の三本足のカエル像。美術館の水滴そのものではありません。同じ姿が、器にも像にもなったことがわかります。
劉海とカエルの話には、少し愉快な場面があります。カエルが井戸へ逃げ込むと、劉海は銭を餌につけた糸を垂らして釣り上げる。メトロポリタン美術館に残る刺繍にも、三本足のカエルに乗り、銭の束を掲げる劉海が描かれています。銭を追うカエルと仙人。その姿から、富を呼ぶ縁起物へつながったのでしょう。

足の数が違うだけなのに、普通の生き物から一気に物語の住人になる。しかも、月、学問、富へと話が広がる。縁起物の世界では、形の不思議さがいくつもの願いを引き寄せたのでしょう。
一方、十四世紀の水滴は、机に置いて眺めるだけの飾りではありませんでした。硯に水を少しずつ注ぐための道具です。美術館はこのカエルを、豊かさに加えて、役人になるための試験での成功を願う印とも説明しています。書く人の手元に、月の生き物と将来への願いが並んでいたのです。
玄関の置物を、もう一度見る
見慣れた金運グッズとして通り過ぎると、そこにある長い変身の歴史を見落とします。三本の足を数えたあと、月の話まで思い出せたら、棚の小さなカエルも少し違って見えるはずです。


