三本足のカエルは、月にもいた。金運の縁起物と仙人の話

古い机の上に置かれた三本足のカエル像と月光を描いた情景 お金と豊かさ
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金貨の上に座る、三本足のカエル。中国の縁起物として見かける「金蟾(きんせん)」です。見慣れたカエルと違い、足が一本足りない。その奇妙な姿が、かえって目を引きます。

豊かさを呼ぶ置物として売られることも多いけれど、古い作品には別の顔もあります。米ニューヨークのメトロポリタン美術館には、三本足のカエルをかたどった水滴があります。書のために硯へ水を注ぐ道具です。富を願う品が、文字を書く机の上にもいたわけです。

月にもいた、三本足

このカエルは月に住むと語られたり、仙人の劉海(りゅうかい)と結びつけられたりします。写真に写るのは、中国で作られた別の三本足のカエル像。美術館の水滴そのものではありません。同じ姿が、器にも像にもなったことがわかります。

劉海とカエルの話には、少し愉快な場面があります。カエルが井戸へ逃げ込むと、劉海は銭を餌につけた糸を垂らして釣り上げる。メトロポリタン美術館に残る刺繍にも、三本足のカエルに乗り、銭の束を掲げる劉海が描かれています。銭を追うカエルと仙人。その姿から、富を呼ぶ縁起物へつながったのでしょう。

中国で作られた三本足のカエル像の実物
中国の三本足のカエル像。本文に挙げた美術館の水滴とは別の品。 写真:Mary Harrsch / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0。表示用に縮小)

足の数が違うだけなのに、普通の生き物から一気に物語の住人になる。しかも、月、学問、富へと話が広がる。縁起物の世界では、形の不思議さがいくつもの願いを引き寄せたのでしょう。

一方、十四世紀の水滴は、机に置いて眺めるだけの飾りではありませんでした。硯に水を少しずつ注ぐための道具です。美術館はこのカエルを、豊かさに加えて、役人になるための試験での成功を願う印とも説明しています。書く人の手元に、月の生き物と将来への願いが並んでいたのです。

玄関の置物を、もう一度見る

見慣れた金運グッズとして通り過ぎると、そこにある長い変身の歴史を見落とします。三本の足を数えたあと、月の話まで思い出せたら、棚の小さなカエルも少し違って見えるはずです。

この話の参考資料

冒頭画像は題材から着想したイメージです。本文の実物写真の出典は画像の下に記しました。