家に入ってくる小さな足跡。インドの灯り祭りと豊かさの女神

ディワリの灯りの下、家の入口へ続く白い小さな足跡と色鮮やかな模様 お金と豊かさ
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家の外から内へ、小さな足跡が続いている。誰かが忍び込んだわけではない。インドの光の祭りディワリの時期、富と幸運の女神ラクシュミーを迎える気持ちを、床に描いた足跡で表す地域がある。

暗くなれば家々に灯明がともり、玄関先には色粉や花びらで描く模様「ランゴリ」が広がる。インド政府の観光案内は、戸口の模様を幸運への歓迎、ラクシュミーへの祈りを新しい年の豊かさへの願いとして紹介している。足跡もまた、福が外から家に入る姿を目に見えるようにする。

向きまで決まっている理由

北インドの習わしを紹介する文化資料には、戸口から室内へ続く女神の足跡が記されている。家から出ていく向きではなく、入ってくる向きだ。小さな印がひとつ増えるたび、まだ見ぬ訪問者が少しずつ近づいてくるように見える。

ヒマラヤ山麓のクマオン地方を紹介する資料には、赤い土の上に米をすった白い液で足跡を描く方法が載る。握った手で足の形をつくり、親指で指先を足していく。庭から戸口、階段、部屋へと進む小さな足は、ただ置かれた飾りではない。家の外から女神が訪ねてくる道筋そのものだ。

写真は、実際のディワリの夜に飾られたランゴリと灯明。足跡そのものは写っていないが、家の入口を整えて迎える祭りの空気が分かる。

ディワリの夜に実際に飾られたランゴリと灯明
ディワリの夜に飾られたランゴリと灯明。足跡は写っていない。 写真:RashmiGhorpade / Wikimedia Commons(CC0。表示用に縮小)

豊かさを待つ家

「お金が入りますように」と願うだけなら、胸の中で済む。ここでは床を掃き、灯りを置き、模様を描く。願いを迎えるために、家の側を少し変えるのだ。

握った手で足の形を押し、指先を足し、少し先へもう一歩。女神を迎えるための道は、家の人の手で描かれる。夜の灯りの中、足跡の先には、暮らしている人たちの部屋がある。

この話の参考資料

冒頭画像は題材から着想した再現画です。本文の実物写真の出典は画像の下に記しました。