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朝、目が覚めたら、夢を忘れないうちに書き留める。そして夜になったら、その日あった出来事と読み比べる。
イギリスの航空技術者、J.W.ダンは、そんな実験を自分で続けていました。夢の中に、その後の出来事に似た場面が現れるのではないか。そう考えたからです。
ダンによれば、夢日記に書いていた一行が、昼間の思いがけない体験と重なったこともありました。けれど、似ていると感じた二つの出来事を並べるだけで、未来を見たといえるのでしょうか。
ダンは自分の体験や実験を、1927年に出版した『An Experiment with Time』にまとめています。次に紹介するのは、1929年に出た第2版に書かれた話です。

火山の夢と、届いた新聞
ダンが本の中で振り返っているのは、南アフリカに滞在していた1902年春の夢です。
夢の中で彼は、火山のある島に立っていました。地面の裂け目から蒸気が噴き出し、島が危ないと感じる。住民を船で避難させようと、近くの島のフランス人の役人たちに掛け合うものの、思うように話が進みません。
夢の中のダンが繰り返し気にしていたのは、危険にさらされる人の数でした。4千人が死んでしまう、と訴えながら目を覚ましたといいます。
やがて届いた新聞に、カリブ海のマルティニーク島で起きた火山災害の記事がありました。島にあるプレー山の噴火で、町が大きな被害を受けたという知らせです。
夢と新聞記事。二つを結びつけたくなる話ですが、数に目を向けると、少し様子が変わります。
本に掲載された新聞の見出しは、推定される犠牲者を「4万人以上」と伝えていました。夢で彼が叫んでいた4千人とは、一桁違います。ところがダン自身は、新聞を読んだとき、その数字を4千人と読み違えた、と後に書いています。間違いに気づいたのは、記事を書き写そうとした約15年後だったそうです。
ダンは、記事を読んだときに、以前そのような夢を見たという誤った記憶が生じたのではないか、とも考えました。その後、別の体験を重ね、夢が未来の出来事そのものではなく、未来の自分の経験に関わっているのではないかと考えるようになります。
ただし、この話は後年の本人の回想です。夢を見た日と噴火の日の前後関係は、この記述だけでは確かめられません。新聞を読む前に夢が記録されていたかも、ここで紹介された資料からは独立に確認できません。数字の読み違いも含め、ダンがどのように記憶し、後から意味を考えたかを伝える話として読む必要があります。
ノートと鉛筆を枕元に
ダンは、印象の強い夢だけでなく、普段は忘れてしまう夢にも目を向けました。目が覚めた直後には覚えていたはずなのに、朝食を終える頃には思い出せない。そんな経験が、彼自身にもあったからです。
本の中で勧めているのは、枕元にノートと鉛筆を置き、目覚めたらまず、かすかに残った一場面に注意を向ける方法でした。
思い出した断片を短い言葉で書き、それぞれの前後に何があったかをたどる。最後に、珍しい細部も含めて、なるべく詳しく書き直す。夜には記録を読み返し、その日に体験したことと比べます。
どこまでが夢で見たものなのか。書くときに、すでに説明を加えてしまう難しさもありました。
ダンは、火花が耳のそばを飛ぶ夢を見た後、実際にふいごで火を吹いていて、火花が顔の近くに飛んだことがあったと書いています。ところが夢日記には、夢で見た「火花」そのものより、夢の中でそれをどう説明したかを書いていた。周囲の人たちが、たばこの吸い殻を投げたという説明です。
後から似たものを探そうとしても、最初に何を残したかで比べられる内容は変わります。ダンは、見た印象と、それに自分が付けた説明の両方を記録するよう勧めました。
二人の男と犬
実験を始めて11日目。ダンは、土地の境界がはっきり分からない場所を歩いていたところ、二つの方向から男たちの叫び声を聞いた、と書いています。犬の激しくほえる声も近づいてきました。
彼は境界の門へ急ぎ、相手の姿が見える前に、そこを通り抜けます。その日の夜、ノートを読み返しても、初めは特に何も見つかりませんでした。
閉じようとしたところで、末尾に薄く書かれた一行が目に入ります。二人の男と犬に追われる、という内容でした。
ダンによれば、その夢を見たことも、書いたことも、読み返すまでは忘れていました。彼にとっては、書き残していなければ見過ごしたかもしれない一致だったのです。
13日目には、隠れた屋根裏を見つけ、そこから逃げようとする夢に似た場面を小説で読んだと記しています。小説の登場人物は、屋根裏から煙突を通って逃げ出します。夢と昼の出来事は、細かな筋まで同じではない。それでも、一部の場面が重なるところに、彼は関心を持ちました。
似ているところを、どう選ぶか
ダン自身、長い夢と長い一日の出来事を比べれば、偶然似た部分が見つかることはある、と考えていました。そのため、ありふれた共通点を一つ見つけるだけでなく、細部まで書き残して比べるべきだと述べています。
一方で、夢の全体が一致しなくても、その一部が後の体験に似ている場合を重視しました。たくさんの場面から似た部分を見つけられるほど、何を一致と数え、何を数えないかが難しくなります。
本には、彼が記録を読み返し、自分で関連を見いだした過程が書かれています。しかし、当時の夢日記の原物や、事前に書かれた時刻、似た出来事が見つからなかった記録の全体は、本に載った回想だけでは独立に確かめられません。別の人が同じ基準で照合したらどうなるかも分かりません。
ダンは実験の体験談について、それ自体は読者にとっての科学的な証拠ではない、と本の中で断っています。彼自身には意味のある発見に思えても、読者が同じ結論にたどり着くには、別の確かめ方が必要だと考えていたのです。
夢より先に残すもの
朝には消えかけている夢を、昼間の出来事が呼び戻す。そのとき、似ていると思ったことは、初めからノートに書かれていたのか。それとも、後から思い出した部分なのか。
ダンは、その境目を確かめようとして、枕元にノートを置きました。彼の本は未来を夢で見られると証明するものではありません。それでも、夢を書き留めた後に初めて現れる問いを、今も手元に残しています。


