猿の夢は何を告げる? 古代エジプトの夢占い手引き

月夜の古代エジプトで巻物を広げる情景を描いたイラスト 星・運命・魂
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夢に猿が出てきたら、良い知らせだろうか。古代エジプトには、見た夢を「良い」「悪い」に分けて読む手引きがあった。イギリスの大英博物館が所蔵する紀元前十三世紀ごろのパピルスには、夢の場面とその意味を並べた一覧が残されている。

博物館の展示解説にある一例では、猿を眺める夢は良くない兆しと読まれ、変化が近いことを示すという。動物が出てきたというだけでは、吉凶は決まらない。何をしていたかまで、読み取る手がかりになっていた。

夢を見たあと、紙を開く

古代の人も、目が覚めれば夢の細部が薄れていったはずだ。そこで思い出した場面を手引きに照らす。そこには、未来を予言したい気持ちと同じくらい、不安な夢に意味を与えたい気持ちがあったのかもしれない。

この手引きは「チェスター・ビーティ第3パピルス」と呼ばれる文書の一部。大英博物館の資料によれば、表には夢を読み解く文章があり、裏には別の文学作品が書かれている。一枚の紙が、いくつもの時代の声を運んできた。

裏側に残るのは、当時の書記ケンヘルケプシェフが写したとされる詩や手紙だ。夢を読む一覧と、戦いを歌う詩や役人への手紙が、同じパピルスの表裏にある。神秘的な手引きも、特別な場所に閉じ込められた本ではなく、書き、写し、使い回される紙の上に残ったのだ。

古代エジプトの夢の手引きを想像して描いたパピルスの図
夢の手引きを広げた場面の想像図。実物は大英博物館に残る。

実物のパピルスは、大英博物館の資料で見ることができる。細かな文字がぎっしり並ぶ姿は、夜に見た夢の断片を、取り逃がさないよう書き留めた人々を思わせる。

占いよりも、不思議なこと

三千年以上前の手引きで、猿を眺める夢の意味を探す。動物や場面の読み方は今と違っても、目が覚めてなお気になる夢があるという感覚には、妙な親しみを覚える。夢を見た人と、それを読み解くための言葉を残した人。その間を、一枚のパピルスがつないでいる。

この話の参考資料

本文中の画像は題材から着想した再現画です。実物の画像は参考資料から見ることができます。