姿が変わっても、離さない。タム・リン

緑のマントをまとった女性が、白い馬のそばで青年を抱きとめる物語の情景 恋とご縁
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抱きとめた相手が、ヘビや獣に変わる。さらに、赤く焼けた鉄にまで変わっても、手を離してはいけない。恋人を救うための条件として、そんな無理な約束を求められる歌があります。

スコットランドに伝わる「タム・リン」です。妖精の女王に捕らわれた青年を、ジャネットという女性が連れ戻そうとする物語。救いに行くのは、彼女のほうです。

語り継がれてきた歌なので、人物の名や変身にはいくつもの形があります。ここでは、研究者フランシス・ジェームズ・チャイルドが集めた伝承歌集の第39番、そのA版をたどります。詩人ロバート・バーンズが提供し、1792年に刊行された本文を収めたものです。参考歌の原文と出典

バラを摘んだジャネット

歌の始まりは、若い女性への警告です。カーター・ホーという場所には、タム・リンがいる。そこを通る女性から、指輪や緑のマント、あるいは処女性を取り立てるというのです。

そんな場所へ、ジャネットは向かいます。バラを摘むと青年が現れ、なぜ許しもなく入ってきたのかと問いただす。彼女は引き下がらず、ここは父から自分がもらった土地だと答えます。

二人の関係がどう始まったかは詳しく語られません。次に父の屋敷へ戻った彼女には、妊娠の兆しが現れています。周囲の人が口を挟んでも、そこにいる領主の誰かを子の父にするつもりはない。彼女はそう言い、自分の相手は妖精だと語ります。

出会いの冒頭には、相手の身体まで要求する不穏さがあります。そのうえで歌は、彼女自身が相手を選び、もう一度会いに行く姿を追います。

川の対岸に木立と草地が広がる、スコットランドのカーター・ホー
カーター・ホーの風景。写真:Richard Webb/CC BY-SA 2.0(2005年撮影)

カーター・ホーは、スコットランド南部にある実際の土地の名です。写真には川と草地、対岸の木立が見えます。歌では、バラを摘んだその場所から、人間の家と妖精の世界がつながっていきます。

女王に捕らわれた人

再び会ったタム・リンに、ジャネットは素性を尋ねます。すると、彼はもともと人間だったと明かします。狩りの帰りに馬から落ちたところを、妖精の女王に捕らえられたのでした。

妖精の国での暮らしは快いといいます。けれども、七年ごとに地獄へ貢ぎ物を納める決まりがあり、今度は自分が差し出されるのではないかと恐れているのです。

捕らわれた彼は、そこから出るための方法を知っています。ただし、自分一人では実行できません。ハロウィーンの夜、真夜中に妖精の一行が馬で通る。そのときに、ジャネットが彼を奪い返す必要があるというのです。

白い馬だけを見分ける

見知らぬ騎士が大勢いる中で、どう見つければよいのか。彼女は、救出に必要なことを一つずつ尋ねます。

黒い馬は通り過ぎさせる。茶色の馬も見送る。乳のように白い馬が来たら、その乗り手を引き下ろす。それがタム・リンです。

彼はさらに、右手には手袋をして、左手は素手、帽子は斜めにかぶり、髪は下ろしていると目印を伝えます。妖精の国の秘密が、片方の手袋や帽子のかぶり方という、妙に細かな姿になって彼女へ渡されます。

ところが、馬から引き下ろせば終わりではありません。彼女の腕の中で、青年は次々に姿を変えられる。何が起きるのか、その順番も先に聞かされます。

木の陰にいる女性と、奥に見える騎馬の一行を描いた古い挿絵
ジョン・D・バッテンによる「Tamlane」の挿絵。1894年刊『More English Fairy Tales』所収。Wikimedia Commons/パブリックドメイン。

最後に、緑のマントで

彼の言葉では、まずイモリや毒ヘビ、続いてクマやライオンに変わります。それでもしっかり抱いていること。赤く熱した鉄に変わっても、彼女を傷つけはしないといいます。最後に燃える炭火になったら、井戸の水へ投げ入れる。すると裸の人間の青年へ戻るので、緑のマントで覆ってほしい。

恐ろしい姿を一つずつ説明する合間に、離さずにいてほしいという頼みが戻ってきます。これから生まれる子の父であることも、繰り返し彼女へ伝えます。

やがて夜になり、ジャネットは約束の場所へ向かいます。真夜中に聞こえてくる馬具の音。黒い馬を送り、茶色の馬を送り、白い馬が来たところで乗り手を引き下ろします。

ここまで救出の手順を詳しく聞かせてきた歌は、実際の変身を長く描き直しません。彼の言葉をよく覚えていた彼女は、タム・リンを取り戻し、緑のマントで包んだ。成功する場面は、そのように短く進みます。参考チャイルドの歌集・第39番

長く聞かされた恐怖の先に、最後に残るのは、人間へ戻った一人を布で覆う動作です。初めは女性から取り立てられる物に数えられていた緑のマントが、ここでは彼を隠し、守るために使われます。

女王は怒ります。取り返されると分かっていたなら、その灰色の目を抜き、木の目を入れておいたものを、と。

救出された喜びのすぐそばに、最後まで青年を手放したくなかった女王の言葉が残ります。ジャネットが包み隠したのは、その女王のもとから連れ戻した、人間の身体でした。