神様からお金を借りて、返しに行く。台湾・紫南宮

装飾の多い屋根の下に参拝者が集まる台湾の紫南宮 お金と豊かさ
写真:S099001/CC BY-SA 3.0(2018年撮影)
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神様に、お金を借りたいと願う。許しを得たら受け取り、後日、返しに来る。

台湾中部、南投(なんとう)県の竹山(ちくざん)にある紫南宮(ズーナンゴン)には、そんな貸し借りの風習があります。借りるのは紙で作ったお金でも、願いを書いた札でもなく、実際に使える現金です。

「発財金(はつざいきん)」、あるいは「福徳金(ふくとくきん)」と呼ばれるこのお金を求め、人々は土地を守る神様、土地公(トゥディゴン)のもとへやって来ます。自分の名前や願いを伝え、借りてもよいかを尋ねるところから始まります。

手の中の二つの筊

土地公に許しを尋ねる道具が、「筊(こう)」です。台湾の廟(びょう)で見かける、片面が平らで、反対側が丸く膨らんだ一対の道具を使います。二つを投げ、出た面の組み合わせを神様の返事として読むのが「擲筊(てきこう)」です。

紫南宮の求金では、土地公と土地婆(トゥディポー)に祈り、誰が、何のために借りたいのかを告げます。土地婆は土地公とともに祀られる女神です。一方が平らな面、もう一方が膨らんだ面になる組み合わせを「聖筊(せいこう)」と呼び、願いを受け入れる答えとします。

台湾内政部の宗教文化地図では、求金の際、許しが出るまでにかかった回数によって借りられる金額が変わり、回数にも限りがあると紹介されています。いつまでも投げ続けて、望む答えを出す仕組みではありません。参考内政部の風習解説

ここで尋ねる相手は、目の前に姿の見える貸し手ではありません。それでも、自分の名前と願いを告げ、二つの道具に返事を求める。神様とのやり取りが、お金を受け取るまでの手順になっているのです。

祈りの先に、窓口がある

許しを得たら、求金の窓口で手続きをし、借りたお金を受け取ります。

紫南宮には、この貸し借りを扱うサービスセンターがあります。2015年の写真を見ると、「求金」と「還金」の表示が、別々の窓口の上に掲げられています。「求金」はお金を願い求めること、「還金」は返すことです。

求金と還金の表示がある紫南宮のサービスセンターと参拝者
写真:Suzuki1314/CC BY-SA 3.0(2015年撮影)

祈りの場所のそばに、貸し借りの窓口が並ぶ。写真からは、信仰上の作法と、人が実際に事務を担う仕組みの両方が見えます。

この風習は、紫南宮が「神明銀行」、神様の銀行と呼ばれる理由にもなっています。現在の廟の案内にも、発財金を求め、受け取り、返すための紹介が設けられています。参考紫南宮の案内

借りたあとに、戻ってくる

発財金には、借りたあとで返すという続きがあります。内政部の紹介では、原則として一年以内に元のお金を返し、気持ちに応じて香油銭(こうゆせん)、つまり廟への寄付を添える習わしとされています。

寄付をどれだけ添えるかを、普通の銀行のように決まった利率で計算するのとは違います。借りた元のお金を返すことと、願いを託した神様へお礼をすることが、同じ訪問の中にあるのです。

なかには、返したあとで再び求金する人もいるといいます。一度きりのお守りの購入とは違い、訪ねて、借りて、日々を送り、また戻るという関係が続きます。

それで商売が成功した、暮らしが好転したという話も信仰の中で語られます。ただ、個々の成功談だけで、借りたお金に同じ効果があると確かめられるわけではありません。

一人の願いが、地域へ戻る

紫南宮の借金について、内政部の文化資産解説は、戦後の暮らしを立て直す時期に、地域の人を援助する小口の資金として発展した経緯を記しています。銀行から借りることが身近でなかった人にとって、廟は、願いを聞いてもらう場所であり、暮らしをつなぐ場所でもありました。

さらに解説は、廟による教育や高齢者への支援にも触れています。お金は一人の願いのために出ていき、返されたものや寄付が、廟と地域を支える側へ回る。その循環まで含めて、この風習を見ることができます。参考内政部の文化資産解説

借りる側が頼っているのは、現金だけではないのでしょう。自分の話を神様へ告げ、許しを受けたと思って持ち帰ること。返しに行ける場所があること。そうした関係にも、土地公への信仰が表れています。

発財金の窓口の写真には、「求金」の隣に「還金」の文字があります。願いを託すところから始まった道には、ちゃんと帰り道も用意されているのです。